マンモグラフィ施設・画像評価からのお知らせ

2.臨床画像評価(アナログ・デジタル)

2.臨床画像評価(アナログ・デジタル)

表1 臨床画像評価項目とその配点

1. 指定した乳房の構成の理解 4点   3. ポジショニング(24点)  
          左右の対称性 4点
2. 画質(56点)       乳頭の側面性 4点
  乳腺濃度 12点     大胸筋 4点
  ベース濃度 8点     乳房後隙 4点
  乳腺内コントラスト 8点     乳房下部の伸展 4点
  乳腺外コントラスト 8点     乳腺組織の伸展性 4点
  粒状性  8点        
  鮮鋭度 8点   4. フィルムの取り扱い(16点)  
  アーチファクト 4点     照射野の範囲 4点
          撮影情報・フィルムマーク 8点
          撮影条件 4点

 マンモグラムは乳房の構成により、脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度の4つに分類される。臨床画像評価はこれらのうち乳腺散在、不均一高濃度、高濃度の3種類の画像により評価され、いずれの画像も基準に達していることが要求される。

スクリーン・フィルム システムはデジタル システムに比較してアーチファクトの頻度と重要性が高く、逆にデジタル システムでは画像から線量の推定が困難であることから撮影条件の明記がより重要である。

1.指定した乳房の構成の理解(4点)

 乳腺散在は、乳腺内の脂肪が 70〜90 %程度、不均一高濃度は 40 〜 50 %程度、高濃度は 20 〜 10 %程度を目安とする。

  • 適切である : 4 点
  • やや不適切である : 2 点
  • 不適切である : 0 点

2.画質 ( 56点 )

a. 乳腺濃度(12点)
適切な乳腺濃度は乳腺内の所見の判読に必須である。
スクリーン・フィルム システムにおける乳腺濃度の不足は、線量不足、現像過程の条件の欠陥、不適切なポジショニングと AEC の使用法の誤りなどによる。マンモグラフィ用フィルムの濃度特性曲線によると、乳腺濃度を 1.20 から 1.59 に設定すると乳腺内の密度差が濃淡差として表現されやすいが、 1.0 を下回った場合にはコントラストは不良となる。また、乳腺濃度が過剰に高い場合は、線量の過剰あるいは不適切な現像条件が考えられ、乳腺被曝線量が過剰となる危険性とともにコントラストも不良となる危険性がある。
濃度計測は、乳腺の最も高濃度部を左右各 3 ヶ所、計6ヶ所を計測した平均値とする。

1.20 〜 1.59     :12点
1.10 〜 1.19 または 1.60 〜 1.69 :10点
1.00 〜 1.09 または 1.70 〜 1.79 : 8点
0.90 〜 0.99 または 1.80 〜 1.99 : 6点
0.80 〜 0.89 または 2.00 〜 2.19 : 4点
0.60 〜 0.79 または 2.20 〜 2.49 : 2点
0.59 以下 または 2.50 以上 : 0点

b. ベースの濃度(8点)
ベースの濃度とは、圧迫板を透過した X 線によって表現される乳房外領域の濃度である。ベースの濃度はフィルムの種類によって決められるところが大きいが、濃度 4.0 以上、かつ露光量の増加が濃度の増加をもたらす範囲で用いられていることが必要である。デジタル画像でさまざまな強調処理が行われていても、ハードコピーで観察する限りは同様である。
測定は、黒化度の高い部分を左右3ヶ所ずつ測定し、平均値で評価する。

  • 4.00 以上 :8点
  • 3.80 〜 3.99 :6点
  • 3.60 〜 3.79 :4点
  • 3.40 〜 3.59 :2点
  • 3.40 未満 :0点

c.乳腺内コントラスト ( 8点 )
コントラストはX線写真の判読にとって最も重要な因子であり、フィルムコントラストと被写体コントラストとにより規定される。被写体コントラストは乳房の構成に規定されるところであり、脂肪が少ない乳房ではコントラストが低くなるのが普通である。フィルムコントラストは、フィルムの種類、線量、現像条件、ターゲット、フィルタ、グリッドや、管電圧などによって影響される。
乳腺内コントラストは主として乳腺濃度を中心とした比較的低濃度域でのコントラストを評価する。

  • とても良い :8点
  • 良い :6点
  • 普通 :4点
  • やや悪い :2点
  • 悪い :0点

d.乳腺外コントラスト(8点)
乳腺濃度を中心とした比較的低濃度域のコントラストとともに、脂肪濃度から皮膚面におけるコントラストも画像の読影には欠かせない。特にデジタル画像では乳腺内コントラストを追求するあまり、皮膚情報が欠損し、あるいは、乳腺の濃淡が描出されないこともありうるため、低濃度域と高濃度域の両領域でのコントラストが必要である。

  • とても良い :8点
  • 良い :6点
  • 普通 :4点
  • やや悪い :2点
  • 悪い :0点

e.粒状性(度)(8点)
粒状性(度)とは、黒化した銀粒子が三次元的にランダムに分布した粒子構造によるもので、ざらつきとして認識される。一種の雑音であり、粒状性が悪い(ざらついている)場合には微細石灰化などのごく微細な構造物の判断に悪影響を与える。一般的に高感度のフィルムは粒状性が悪くなりやすい。粒状性は大胸筋や乳腺の高濃度(光学的には低濃度)部において評価しやすい。デジタル画像でも線量不足あるいは過剰な強調処理により同様の現象が観察される。

  • とても良い :8点
  • 良い :6点
  • 普通 :4点
  • やや悪い :2点
  • 悪い :0点

f.鮮鋭度(明瞭度)(8点)
輪郭や細い線が明瞭に描出されているか否かを判断する尺度である。マンモグラムではクーパー靭帯などの細い線状構造、組織の境界、石灰化の辺縁などが明瞭かぼけているかで判定する。圧迫不足に起因する体動によって生じるブレやスクリーンとフィルムの密着不良による局所的な鮮鋭度の低下などがある。

  • とても良い :8点
  • 良い :6点
  • 普通 :4点
  • やや悪い :2点
  • 悪い :0点

g.アーチファクト(4点)
スクリーン・フィルム システムのアーチファクトは、さまざまな理由で生じる障害陰影である。最も多いのは、スクリーンとフィルムの間に入った細かいちりがスクリーンからの光の影をフィルムに作るものであり、暗室やスクリーンの清掃の重要性が強調される理由となっている。そのほか、指紋、かぶり、グリッドライン、頭髪、肩、対側乳房あるいは手などの陰影、静電気やキズなど、さらに乳房皮膚の皺や現像の不調など、さまざまな因子による本来ないはずの陰影がおきる。その種類は程度により読影に使用を生じるので、細心の注意が必要である。
デジタル システムでは、スクリーン・フィルム システムで高頻度にみられるごみや指紋、現像機などによるアーチファクトはほとんどなく、書き込みムラなど異なった種類のアーチファクトが出現する。しかし、その頻度は低く、アーチファクトの画像評価における重要度は低い。

  • ない :4点
  • 多少あるが読影には支障なし :3点
  • 読影に支障をきたす恐れがある :2点
  • 読影に支障をきたす :1点
  • 読影困難 :0点

新画像評価基準

  1. ファントム画像評価(視覚評価とデジタル評価)
  2. 臨床画像評価(アナログ・デジタル)
  3. ポジショニング(24点)
  4. フィルムの取扱い(16点)
  5. 総合評価